絵を描き続ける理由──亡き友と歩む、私の絵画展への道

ライフスタイル

私は毎年、東京都美術館で開催される「新生美術会」に、P40(100cm × 73cm)の大きなキャンバスで絵を出展しています。
構想はいつも頭の中にあります。しかし、私の描き方は人物を多く登場させるスタイルなので、完成までにとても時間がかかります。

実は、私は一度も絵をきちんと習ったことがありません。基本的な構図や遠近法も自己流。
それでも、今さら教科書的な「正解」を学ぶことで、自分らしさが消えてしまうのでは…という思いが強くあります。
だから、私は「自己流」を貫きます。例えるなら、アンリ・ルソーやシスコさんのような独自の世界観です。

私の作品は、過去に自分が心を動かされた「実体験」をモチーフにしています。
アクリル絵の具を使い、強くポップな色彩で、細部まで描き込むのが自分の流儀です。

亡き友との約束

今から4年前、高校の同級生が先にこの絵画展に参加していました。
彼は高校時代、容姿も優れ 身体能力も高く女性からモテる存在でした。しかし、20歳のときのバイク事故で脚に大きな障害を負い、4年前久しぶりに会った彼は、結婚することなく独身のまま生きてきました。

久しぶりに再会した彼は、まるで世捨て人のような表情で「結婚できなかったのは、この体のせいだ」と悲観的でした。
私は「男の価値はそこではない。生き様だ」と、少し偉そうに聞こえたかもしれませんが、心を込めて言いました。

長年、企業の障害者枠に守られ特別扱いされた環境にいたためか、日常会話に関し大人同士の会話が、ままならないように見えました。
それでも、私は彼と絵という共通の目的を持ち、お酒を飲み、彼を障害者としてではなく、一人前の社会人として接し、彼の心に少しずつ入り込む事を目指しました。

彼のいない絵画展

「来年は一緒に参加しよう」──そう言っていた矢先、彼は風呂場での事故により、この世を去りました。
突然の訃報に、私は深い喪失感に包まれました。

それでも、私は今も彼の意思を胸に、毎年もキャンバスに向かい続けています。
作品を描くことは、私にとって過去の自分と、そして彼との対話でもあるのです。

絵を描くことは、ただの趣味ではなく、人生の一部。
そして、この絵画展は、彼と私をつなぐ「永遠の約束」の場所なのです。