私は、毎年6月に開かれる展覧会に大きな絵を出展しています。
今年のテーマは「私の感じた昭和」。懐かしい街並みや子どもたちの表情を通して、あの時代特有の空気感を描いています。
今回は、制作の過程でふと気づいた“髪型”から見える昭和の文化について書いてみたいと思います。
子どもたちの髪型に宿る「時代の空気」
今回の作品には、たくさんの子どもたちを登場させています。
制作を始める前に、当時の写真や雑誌、ニュース映像などを参考に資料を集めました。
そこで気づいたのが――女の子の髪型の多くが、前髪を短く切りそろえた「おかっぱ」スタイル、しかも襟足を刈り上げた「乙女刈り」だったということです。
現代ではさまざまな髪型が当たり前ですが、昭和の子どもたちは驚くほど統一感があります。
おそらく、当時の住宅事情や生活環境も影響していたのでしょう。洗髪の頻度が少なく、ドライヤーが一般家庭に普及していなかった時代――手入れのしやすい短髪が実用的だったのです。
長い髪は「上流階級の象徴」だった?
資料を見ていると、長い髪の女の子は比較的少なく、どちらかというと裕福な家庭や、芸事(日本舞踊や音楽)を学んでいる子どもたちに多く見られました。
つまり、当時の社会では「ロングヘア=上流階級的な象徴」としての意味合いがあったのかもしれません。
振り返ってみると、私が中学生だった1970年代初期も、ロングヘアーの女生徒はまだ珍しかった記憶があります。
高校生も同様で、全体的にミディアム程度の長さが多かった。ところが、大学生や社会人になると、一気に髪を伸ばす女性が増えていきました。
社会的制約から少しずつ自由になっていく過程が、髪型の変化からも感じ取れるのです。
「統一」と「自由」―時代を超えた美意識の変化
昭和の写真を眺めていると、どこか社会全体に“統制”の空気が漂っていたようにも思えます。
制服、髪型、持ち物――個性よりも「みんな同じであること」が重視された時代。
しかし、それが悪いというわけではなく、当時は“秩序”や“安心感”を象徴するものでもありました。
一方、現代はまさに自由の時代。
情報が簡単に手に入り、自分の好きなスタイルを自由に選べる。
SNSやネットを通して多様な価値観が受け入れられる今、改めて「選べることの豊かさ」を感じます。
昭和を描くことで、今を見つめ直す
絵を描くことは、単なる懐古ではなく「今を見つめ直す作業」でもあります。
当時の子どもたちが過ごした時代背景、社会の価値観、家族の形、生活の空気――
そうした要素を描きながら、改めて「時代が人をつくり、人が時代をつくる」という言葉の意味を感じました。
「乙女刈り」の少女たちを描きながら、私は今の子どもたちの自由な髪型や表情を思い浮かべます。
不自由さの中にも美しさがあり、自由の中にも選択の責任がある。
その対比こそ、昭和という時代の魅力なのかもしれません。
まとめ
昭和の子どもたちの髪型ひとつをとっても、そこには社会の背景や暮らしの文化が色濃く表れています。
自由な今だからこそ、少し立ち止まって「制約の中の美しさ」を感じてみるのも良いのではないでしょうか。
私の作品「私の感じた昭和」には、そんな想いも込められています。

